本が嫌いだった話

週一更新くらいはしたい(余裕)と思っていたのですが、意外とそれすらままならないあたり、実に幸先の良いスタートです。(皮肉)

 

ところで、前回の記事の最後の方で仕事は本に関すること、となぜかぼかして書いたんですが、現在私は図書館司書をしています。

 

でも、昔から本が好きだったかというと全然そんなことはなくて、むしろ嫌いだったといって良いと思います。

 

なんとなく今回は、本が嫌いだったときから、面白いな~と思えるようになった転機について書きたいと思います。

 

本が嫌いだった、というのは小学校中学年~高学年くらいまでそうでした。本の面白さを知らないとかいう生ぬるいものではなくて、積極的に本が嫌いでした。

私の母は結構本を読む人で、特に外国文学が好きでした。なので、家にはモームとかドストエフスキーとか、名だたる外国文学がずらりとあったし、よくわからない現代日本人作家の本まで、とにかくたくさん本がありました。

今となっては母もテレビドラマの方が好きで本はめっきり読んでいないようですが、とにかく、よく読む人でした。小さいころ、大人はそういうものだとなんとなく思っていましたが、今にして考えると母は人並み外れて読む人でした。なんとなく母が読む人だったので、父はそんなに読んでいないイメージがありましたが、それでも今にして考えてみると本を読む方の人ではあった(今も?)とおもいます。

 

そんな読書家?の両親だったので、学校から私が読書感想文の宿題を持ち帰ると、結構外国文学の名作を薦めてきていたんです。小学校三年生くらいの時に、アンデルセンの『絵のない絵本』を一晩一話ずつとか読み聞かせてもらって「あ~くそつまんね~」とか思ってました(笑)

他にも『岩窟王』とか薦められて、「いや絶対読まないから」とゴミ箱にぶち込む勢いで拒絶していた気がします。

 

今にして考えてみると、本を拒否することは自分にとっての親への反抗の一つの表れだったのかもしれません。

そんなこんなで本が嫌いで全然本も読まず、読書感想文は読んだことにしてでっちあげる方式を採用していたわけですが、ある時転機が訪れました。

 

その転機について語るために、小学校時代に通っていた塾についてさらにどうでもいい話をします。

私は小学校四年生くらいからHという塾に通っていたのですが、そこは小さな塾だったので同じクラスには5人くらいしか生徒が居ませんでした。その中には他校の、やたら頭のいい女の子、やたら頭がいいけどやたら鼻をほじるH君、すごく優しいけど勉強がものすごくできないS君、そして私と同じ小学校から二人、I君とO君が通っていました。S君が先生にあてられたときのあの長い沈黙を、私は今も張りつめた空気やS君の「えーと……」みたいな声と共に思い出します。

 

そこで習ったことはほとんど覚えていないのですが、社会科の先生がアメリカのエンパイアステートビルで告白してフラれた話や、国語の先生の胸が大きかったこと、そして校舎の外にあった自販機でよくメロンソーダを飲んでいたことなど極めてどうでもいいことは昨日のように覚えています。

 

そうそう、親から軽食用に小遣いをもらっていたので、帰り道にその小遣いをどう使うのかは非常に頭を悩ませるポイントでした。

あのころはマックがハンバーガー60円とかだったので帰りにマックに寄ったりもしていました。一度ハンバーガーを我慢してお小遣いを貯金すると、次回110円のチーズバーガーを買うことができるという裏ワザもありました。

他にも、帰り道に立ち寄る古い文具屋の軒先で、当たりつきの一回百円ガチャポンを毎回一つずつ買っていたこともありました。(実際数回当てましたが、当たりといってもちゃっちい集音機とか、ボイスメモとかでした)

そういえば、塾からの帰り道のバスで一度おじさんが倒れたことがありました。倒れたおじさんが起き上がってすぐに、「大丈夫大丈夫」とか言いながらバスを降りたのを、赤の他人のおばさんが追いかけて「私も降ります」と追いかけて行ったのを覚えています。あの二人はその後どうなったんでしょう……?と十五年も前のバスでの出来事を思い出しています。

 

と、これだけ熱心に書いているとこれは何かの伏線の話かとお思いでしょうがなんでもないただの昔話で本筋とは何ら関係ありません(笑)

 

さて、そんなこんなで塾に通っていたんですが、そこで一緒に通っていた同じ小学校のO君が転機をもたらしてくれたその人です。いや、ほんとに塾の話いらなかったじゃん……!とお思いかもしれませんが、その通りだと私も思います。

 

O君と塾の廊下で話していた時に、たしか私が本嫌いであるという話をしたんだと思います。当時から読書家だったO君は、「デルトラ・クエストを読んでみろ。これは絶対本読んだことなくても読めるから」と私に『デルトラ・クエスト』を強く勧めてきました。

まぁそんなに言うなら……?ということで『デルトラ・クエスト』を買って読み始めたんですが、本当に面白かった。

何が面白かったのかよくわかりませんが、寝食忘れて読んだ、という感じでした。

 

なんか塾の話とかどうでもいい話を長く語ったわりに、本との出会いについてはあまりに語りが簡素になってしまい自分でも驚きを隠しきれません。(笑)

 

そんなこんなで本おもしろいな~と思った私は、他にもクラスの友達からの薦めで『ダレン・シャン』を読んだり、と少しずつ本を読んでいくようになったのでした。

 

なんかもう少し本との出会いについて熱烈なタッチで描けるかと思ったのですが、意外と本との出会いを語るのって難しいのかもしれません。結局端的にいえば、同級生のO君から薦められて『デルトラ・クエスト』を読んだらハマった、というただそれだけの話なのですが、やっぱり私にとっての本との出会いというのはそれだけではなくて、S君が先生にあてられて凍り付いていた塾の教室の雰囲気であったり、塾の道に食べたマックであったり、そういうものと渾然一体となって体験されていたのだと思います。

 

そういうものを一切抜きにして、別様の方法で誰かに『デルトラ・クエスト』をすすめられていたとして、私はそれを読んでいたのだろうか……?とありもしない別の世界線に思いをはせてしまいます。